中庭がつくる余白の建築
― 防犯性と安心感を礎に、家族それぞれの「居場所」を見つけられる住まい ―
S様邸の家づくりは、ご主人の「防犯性への強い願い」と、奥様の「一人になれる小さな居場所を持ちたい」という想いから始まりました。建築家・田辺真明は、土地の条件を読み解きながら、カーテンのいらない安心感と、ヌックや図書コーナーなどの心地よい空間をデザイン。家族が自然体で安心し、日常に小さな楽しみを見つけられる住まいが形になりました。
敷地の形状と光の入り方を緻密に読み解き、道路からの視線を遮りながらも開放感を確保した外観。水平ラインとマテリアルのコントラストが、構成的でありながら温かみのある印象を与える。光と陰が一日の時間の流れを映し出す。
夜の庭と一体化した外構照明が、家と街の境界をやわらかく照らす。中間領域の植栽をライトアップする光が、壁面や床に陰影を描き、日中とは異なる静かな表情を生む。その光の中で、子どもたちが安心して遊ぶ姿が、暮らしの豊かさをそっと物語っている。
植栽を照らす柔らかな光が、壁面や床に静かな陰影を描く。屋内の灯りと外構照明が溶け合い、内と外の境界が消える。夜風にそよぐ葉音と、淡い光のリズムが、住まい全体に穏やかな呼吸をもたらす。一日の終わりをやさしく包み込む、静寂の中の豊かさ。
吹き抜けからの柔らかな自然光が空間全体に広がり、時の移ろいを感じさせるリビング。素材の質感と静けさの中に、家族が自然と集う温もりが漂う。家具や建具も空間の一部として設計されている。
上下階を光と風がつなぐ、家の中心的存在。シンプルな構成の中に、光の縦方向のリズムが生まれる。素材の陰影が美しく、機能性と造形美が一体となった階段空間。
左|家のどこにいても、心地よい居場所がある。踊り場は通路でありながら、光が差し込む“第二のリビング”。子どもたちが自然と腰を下ろし、本の世界に没頭できる余白が設計されている。
右|家族の気配を感じながらも集中できる半独立型のワークスペース。光の取り込み方と視線の抜けが、長時間の作業にも心地よさをもたらす。日常と仕事が静かに共存する場所。
料理をする姿がリビングと自然につながる、オープンで機能的なキッチン。素材のトーンを抑え、光と影、料理の色が引き立つ設え。家族の会話が生まれる中心として、日常の温度をデザインしている。
朝は柔らかな光に包まれ、夜は灯りが木の質感を引き立てるダイニング。家族の会話や食の時間が、光と影の移ろいの中に静かに刻まれる。余白を残した空間に、音や香り、ぬくもりが溶け込み、日常がゆるやかに豊かさへと変わっていく。
中庭を臨む部屋 | 視線の抜けと光の反射が心地よい、内と外をゆるやかにつなぐ空間。四季の移ろいを感じながら、プライベート性と開放感を両立。自然を内包するように計画された中庭が、暮らしに静かな余白を与える。
屋内と屋外の境界をあいまいにする中庭は、光と風、家族の気配をつなぐ緩衝空間。四季の変化を映し出す植栽や、壁面に落ちる陰影が、住まいに豊かな表情をもたらす。閉じすぎず、開きすぎず──プライバシーを保ちながら、自然と共に呼吸するための“間”がここにある。
ランドリールーム | 機能性と快適性を兼ね備えた家事動線の要。乾太くなくとも乾く、通風と採光の設計。“効率”の中に“心地よさ”を感じる、建築的に整えられた家事空間。
寝室 | (自然に眠りへ誘われるよう照明計画にも配慮)光の明暗と温度を細やかにコントロールし、夜の静けさへと誘う寝室。間接照明が壁や天井をやわらかく包み、自然な眠りのリズムをつくる。最小限のデザインに、深い安らぎを宿す空間。
DESIGN
田辺 真明
(田辺真明建築設計事務所)
DETAILS
「カーテンのいらない安心と、ひとりになれる豊かさを」
―防犯性と安心感を礎に、家族それぞれの「居場所」を見つけられる住まい―
- 所在地:大和市
- 敷地面積:31.73坪(104.91m²)
- 延床面積:28.1坪(93.16m²)
- 家族構成:大人2人 こども2人
- Ua値:0.40W/m²K
- ηAc値:1.2(W/m²)/(W/m²)
- ηAc値:1.0(W/m²)/(W/m²)
- C値:0.17cm/m²
- 耐震等級:耐震等級3(許容応力度計算)
- 施工:2022年
土地の特徴と建築家の読み解き
計画地は南側に計画道路があり、日当たりに恵まれた立地でした。一方で、周囲からの視線や防犯性をどう担保するかが大きな課題。田辺は「カーテンを使わずとも安心して暮らせる」ことを前提に、開口部を最小限に抑えつつ中庭を中心に配置。外部からの視線を遮りながら、自然光と風を招き入れる設計としました。
オーナー様の要望
- ● ご主人:過去の経験から防犯性を重視。特に「子どもが留守番をしている時に安心できる家」であることを強く要望されました
- ● 奥様:兄弟が多い家庭で育った経験から「一人になれるヌック(小さな居場所)」を希望。また、家事や収納の効率化にも関心が高く、「汚いゾーンときれいなゾーンを分けたい」「扉付き収納で雑多さを隠したい」というニーズがありました
ご要望を反映した建築家の提案
建築家は防犯・プライバシー確保と家族の「居心地」を両立した住まいを提案・設計しました。
- ● カーテンレスでも安心な暮らしを実現するため、中庭型プランを採用。窓は外部視線を遮りながらも室内を明るく保つ配置に
- ● 家族の居場所の多様性を意識し、リビング脇にスタディコーナー、FCLに隣接するヌックを提案
- ● キッチンはペニンシュラ型とし、収納効率を高め、片付けやすさを考慮
- ● 子ども部屋は将来的に仕切れる可変性をもたせ、長期的なライフスタイルの変化にも対応
暮らしの豊かさの実現
完成したS様邸は、防犯性と安心感が暮らしの基盤となり、家族一人ひとりが自分の居場所を見つけられる住まいへと昇華しました。
ヌックや図書コーナーは「ひとり時間」を大切にする奥様の願いを叶え、開放的なリビングや中庭は「家族時間」を豊かに彩ります。